第9話 『非常識な挑戦!egg誕生。』

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PRGRのクラブにまつわる過去や、新製品開発に奮闘するスタッフのいま、そして新しいクラブを世の中に生み出す未来を紹介していくノンフィクション、PRGRクラブ開発物語、通称ギアスト!今回はあの非常識なクラブの誕生秘話をご紹介します。

2000年代に入り独自路線を進んだ結果苦戦を強いられたものの、チタンとカーボンの複合構造ドライバー”DUO(デュオ)”のヒットや、シャープな中空構造アイアンTR-X910などで再び輝きを取り戻したPRGR。画期的構造を持ちながらゴルファーの五感にも訴えかける機能を備えることによって、多くのゴルファーに受け入れられることとなりました。

 

が、そうなるといつもの虫がムクムクと疼きだします。

 

アプローチギアの誕生!

2003年、DUOドライバーを無事発売、ほっとひと息の開発スタッフ。束の間の休日をゴルフ場で過ごしていましたが、、、

 

開発スタッフ 『ドライバーが飛ぶようになって、アイアンのやさしさも向上している。でもなんでスコアが変わらないんだよ!!』

 

創業当時は素人集団であったPRGR開発チームも創業から既に20年が経過し、ゴルフクラブ設計、開発力においては大きく成長していましたが、実際のゴルフの実力となるとアベレージゴルファーの域を脱せず、夢の70台は夢のまた夢という状態でした。

そこで自分達のスコアを徹底分析した結果、結局スコアアップの大きな鍵を握っているのは”ショートゲーム(アプローチ・パター)”だということに気付きます。

 

開発スタッフ 『なんとしても70台を出したい!ミスしても寄るアプローチギアを作る!!』

 

こうしてスコアアップのためのギア開発に取り掛かります。そこにどれだけの需要があるかは置いといて、とにかくアプローチを寄せたいのです。

まず様々なクラブで30ヤードのアプローチショットをおこなうと、一番結果が良かったのがパターを使ったアプローチで、次は8番アイアンでした。アプローチショットは色々な打ち方があるから難しいんだ。ならばひとつの打ち方しかできないクラブにすれば安定性が増すはず。そこに着目した開発スタッフは、クラブでゴルファーのアプローチスイングを変化させることに挑戦します。

実際に、INTEST(タラコ)を開発した時には、クラブ長さを長くすることによってゴルファーのスイングをフラットにし、DUO(デュオ)を開発したときにはクラウン部分のヒップバックをなるべく水平にすることによってあおり打ちを抑制しました。

 

パターの長さ、質量、ライ角をベースに、30ヤード以内の最強ギアを開発する。ヘッドはダフってもミスになりにくい広いソールと方向を指し示すアライメントサインをデザインし、ボールをしっかり捕まえられるようフェースプログレッション(FP)値の小さいオフセット設計にしました。

さらに手首の過剰なコックがスイングの安定性を損なわせているため、グリップを太くして余計な動きを抑えます。

こうして出来上がったテストクラブを持ってラウンドすると、驚くようにピンに絡み、今まで恐怖しかなかったアプローチショットが楽しみになってきました。画期的なアプローチギアの誕生です!

 

開発スタッフ 『最高!でもこれって、”チッパー”だよね(笑)』

 

当時チッパーというのはどちらかというと、初心者や女性ゴルファーが使うものという認識のクラブでした。でもリアルゴルファーとなっていた開発スタッフは知っています。70台を目指すゴルファー、競技に出ているゴルファー、ゴルフ歴の長いベテランゴルファーだってアプローチに悩みを抱えていることを。そこでターゲットをそのようなゴルファーに定め、ヘッドを黒く仕上げて武器感を出し、チッパーという表現は使わず”ランニングウェッジ”として世に送り出します。

こうして2005年に発売されたのが、R35ウェッジです。

ロフトは当時の8番アイアンと同じ35度。キャリー1対ラン3の割合でピンを狙うクラブは、潜在需要にミートして大ヒット。

欠品状態が半年近く続き、途中でスコアラインの溝のルール改正のためマイナーチェンジはあったものの、発売から現在まで16年以上販売する大ロングセラー商品となっております。

PRGR本来のプロダクトアウト型の需要創造に成功した開発チームは、その流れで新たな挑戦に舵を切ります。

 

開発スタッフ 『このヘッドでアイアンセット作ったら、めちゃくちゃゴルフが簡単になるんじゃないか?』

 

シニアのためのギア

当時、開発チームは飛距離ダウンに悩む70歳以上のシニアゴルファーに向けたクラブ開発に取り組んでいました。球が上がらない。7番アイアンの飛距離が130ヤード。150ヤードを打つには7番ウッドを使用しているというシニアゴルファーに、”7番アイアンで150ヤードを飛ばせるアイアン”を提供するというのが開発コンセプトです。

そこでR35ウェッジのヘッドをベースにしたアイアンセットを試作しますが、ソールが広くやさしさを前面に出すものの、ヘッドが重過ぎてとても振り切れませんでした。

開発が暗礁に乗り上げるなか、生産協力会社が新しい鋳造技術を開発。ここに着目し、あらためてソールの広いキャビティアイアンの開発に取り掛かります。

シニアゴルファーが飛距離をアップさせるには球を上げることが必要です。そのためにはまずヘッドの重心を下げなければいけません。そこでフェースのトゥ部分を低くし、重心を深くしつつ重心を下げることに成功します。

ただし、それだけではシニアのヘッドスピードではボールは十分には上がりません。さらに打ち出し角度を上げるため、フェースプログレッション(FP)に着目します。

FP値についてはINTEST、ZOOMを開発する際にさんざん悩んだテーマなので過去の知見を生かし、従来のアイアンよりFP値を大きく(出っ歯に)することで打ち出し角を上げることができました。

結果、球が上がり過ぎるくらい上がるので、ロフトを立ててみるとびっくりするくらい飛距離が伸びました。が、FP値が大きいアイアンは球がつかまらず難しくなってしまいます。そこで様々な試行錯誤の末に、シャフトを長くすることによってボールのつかまりを確保することができました。

実際に試作品をゴルフ場に持っていってテストしてみると、従来のアイアンより高弾道で、従来のアイアンより2番手距離が出る衝撃の弾道を体験。

 

開発スタッフ 『7番で180ヤード!まるでPGAツアープロの飛距離だ。アマチュアでこの距離が出るとゴルフが劇的に変わるぞ。』

 

非常識なアイアン

R35ウェッジのヘッドの試作から数年を経て、開発チームはこのアイアンの市販化に向けて本格的に動き出します。ただし出来上がった試作クラブはヘッドが大きくソールも幅広く、通常のアイアンよりも7番アイアンでロフトが3~5度も立つ29度、クラブ長さは一般的なカーボンアイアンより半インチ長い37.5インチというもの。

これをアイアンと呼んで良いのかわかりませんが、PRGRが得意とする独自路線クラブです。

ちなみにPRGRは過去いくつもの画期的なクラブを世に送り出してきましたが、独創的すぎて世の中の評価を得ることができなかったモデルがいくつもありました。そこでこのアイアンに関しては、発売前に一般ゴルファーへの徹底した評価テストをおこなうこととします。

開発スタッフは試作品を持って毎日のように練習場を5、6箇所駆け巡り、練習しているゴルファーに声を掛けて試してもらい、夜中に会社に戻ってその評価をまとめる日々を続けます。そんなある日、川崎のとある練習場を訪れると、超高級クラブセットを持った紳士がおひとりで練習していました。

恐る恐る声を掛けると、毎日練習に来ているが150ヤード地点にあるアイランドグリーンに7番アイアンで届かなくなったのが悩みとのこと。そこでサインペンでソールに”7”と書かれた試作アイアンを手渡して打って貰うと、、、

甲高い打球音を響かせながら、ボールは150ヤードのグリーンをキャリーで超えていきました。

興奮して”これをこのまま売ってくれ!”と詰め寄る紳士と、困りながら対応する開発スタッフ。心の中で、

 

開発スタッフ 『このアイアンは行ける!シニアゴルファーをここまで興奮させられるアイアンは今まで無かった!!』

 

と叫び声を上げ、急いで会社に戻ります。このように多くのゴルファーの評価テストの結果、予想以上の支持を得て、従来のアイアンには無いヘッド設計、長さ、重さを持ったアイアンが誕生しました。

あまりにもヘッドが大きかったため、締まって見えるようにヘッドカラーを黒くしたことによって、さらに異様な雰囲気を醸し出します。

※egg PC‐01 7番アイアン

特にロングアイアンは幅広いソールのため、アイアンと思えないような非常に大きな打球音が特徴的です。

※egg PC‐01 3番アイアン

 

開発スタッフ もの凄く非常識なアイアンが完成したぞ!』

 

非常識な火を熾す

この既成概念を打ち破ったアイアンは、あまりに非常識すぎて社内でも賛否両論が巻き起こります。

過去、PRGRには独創的過ぎたため世の中のゴルファーの支持を得られず経営的に打撃を受けたモデルがいくつもあったため、ここはさすがに慎重にならざるを得ません。そして前例の無いその異形のアイアンは、大手ゴルフショップにプレゼンをしても反応は微妙なものでした。

そこで下した決断は、、、社運を賭けない!でした。

あくまでもテスト販売のスタンスで販売予算を立てず、PRGRの総合カタログにも掲載しない。予算が無いので広告もほとんどできません。このアイアンに賛同してくれた地方のゴルフ専門店約50店でのみ販売するという、都会でのシェアアップを目指して展開してきた従来のPRGRの販売戦略からもかけ離れた、非常識な取り組みに挑戦することにしました。

 

開発スタッフ 『この50店でまず小さな火をつける。地方で山火事を熾して、いつか都会にまで延焼させてみせる!』

 

既成概念を打ち破る非常識なクラブ設計、販売手法での船出となったアイアンは、”常識の殻を打ち破る。”という意味を込め”egg(エッグ)”と名付けます。

大きな可能性を秘めたこの卵を孵化させるために、開発スタッフは全国の取り扱い店を回って、ゴルフ場で一緒にテストラウンドをしてその性能を店主一人ひとりに伝えていきます。ラウンドして実際にボールを打つと、半信半疑であった店主もその飛距離性能に驚き、ゴルフ場からその場でこのクラブが合いそうな顧客に連絡して興奮しながら試打することを呼びかけます。

こうして真夏の全国行脚は丸々一ヶ月間に及び、開発スタッフもげっそりと痩せ細ることとなりますが、遂に2007年9月にeggアイアン(PC-01)の発売を迎えます。

なけなしの広告費でゴルフ場入り口の広告ボードに人間とヒョウの顔を組み合わせた広告を貼ると、近隣住民の方から”夜中に見たらびっくりする!”、”恐いから撤去して!”とクレームの嵐が殺到。非常識な広告はかなりの物議とインパクトを与えてしまいました。(INTESTで宇宙人をキャラクターとした広告を貼ったときと同じ反応です)

そんなこんなで発売して1ヶ月間の販売セット数は、、、約200セット

これは歴代のPRGRのアイアンの初月販売数と比べたらかなり少ない数量ですが、展開店舗数50店で見ると大大大成功です。なかには1店舗で20セットも売り上げてくれたショップもありました。

こうして地方の限られたゴルフ専門店で小さな火を熾すことに成功。まだ都心部ではまったく知名度の無いクラブですが、200名のユーザーは各地でその飛距離性能を周囲のゴルファーに見せつけ、口コミでその火は徐々に大きく広がり、ついに翌年には都心部でもエッグの飛距離性能は話題に上るようになります。

多くのゴルファーの要望の声に応える形で2008年にはPRGR総合カタログにも掲載し、全国のゴルフショップで本格発売を開始。ようやく卵を孵化することができました。

 

非常識な戦略で世の中に広がっていったeggアイアンは、その後モデルチェンジを繰り返すたびに進化を続け、今ではPRGRを代表するモデルとなり、飛び系アイアンの元祖としてその名は広くゴルファーに知られることとなりました。

PRGRならではの独創的なクラブ開発と過去の失敗の経験を逆手に取った販売手法で世の中に浸透させることに成功したエッグは、”非常識”というコンセプトを武器に、様々な新しい試みにチャレンジしていきます。その後、非常識なフェアウェイウッド、非常識なドライバー、ルールを超える非常識なクラブ、ボールという卵を世の中に産み落として行きますが、これはまた別の機会にご紹介したいと思います。

つづく

コメント

  1. K島 より:

    私、適切ライ角がアップライトなので、フォージドを調整して使っておりました。素晴らしいアイアンでした。
    誕生にこんな歴史があったんですね。

    1. prgr より:

      K島さん
      コメントありがとうございます!エッグフォージドは競技志向の方にも好評でしたね。とにかく飛ぶし、引っかかりづらいのも好評の要因でした(^_^)

  2. ヨッシー7843 より:

    30年以上PRGR愛用者です。
    確か4年程前、4,5番アイアンが上手く打てなくなりeggの4+,6+に換えました。現在62歳になりましたが、同伴者から”それどこの何?”と聞かれる場面が多いです。これからもあくなき挑戦を期待しています。

    1. prgr より:

      ヨッシー7843さん
      コメントありがとうございます!ロングアイアンはなかなか難しくて最近は使う方が減ってますが、eggだと強力な武器になりますよね。これからもぜひぜひゴルフ仲間の皆さんに宣伝をお願いいたします(^_^)

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