第19話 『アイアンの常識を疑え。』NEWアイアン開発編①

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PRGRのクラブにまつわる過去や、新製品開発に奮闘する現在、そして新しいクラブを世の中に生み出す未来を紹介していくノンフィクション、PRGRクラブ開発物語、通称ギアスト!多くのアマチュアゴルファーの悩みを解消すべく、創業以来、研究開発を続けてきたプロギア。

ヘッドスピード40m/sの日本の平均的なゴルファーへ、最大飛距離をもたらす”LS(エルエス)”シリーズを完成させたPRGR開発チーム。

前回までは新しいドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティの開発秘話をお届けしてきましたが、今回から新しいアイアンの開発に取り組むPRGR開発チームの姿をお届けします。

 

アイアンの常識を、疑え

1983年にゴルフ業界に参入したPRGR。後発メーカーとして、PRGRの歴史はゴルフクラブの常識を疑うことから始まりました。

 

創業メンバー 『ロングアイアンが難しい!でも何故ロングアイアンのソールは薄くて、ウェッジのソールが広いんだろう。』

 

アイアンの形状を疑え

ロングアイアンには安定感とやさしさを。ショートアイアンには操作性を。という”イージーロング・コントローラブルショート”を開発目標に、ゴルフの素人集団だった創業メンバーはオリジナルアイアンの開発に取り掛かります。

その結果、長い歴史の中で出来上がったゴルフクラブの形状を根本から見直し、ロングアイアンのソールを広くしてヘッドバランスを重くし、ウェッジのソールを小さくバランスを軽くするという【ノンリニア設計】を取り入れた、CTシリーズアイアン(1984年)を発表。

伝統的なアイアン形状の常識を完全に覆したこのアイアン。ゴルフショップで営業マンは必死に説明をしますが、店主には納得してもらえません。が、試打会等ではゴルファーから打ちやすいと大好評。結果的にロングセラーを記録しPRGR初のヒット作となります。

 

アイアンのスペックを疑え

そしてCTアイアンの発売から9年、ゴルフクラブの重心を3次元で精密に設計し、精巧に再現したDATAシリーズアイアン(1993年)を発売。

番手別にロフト角と重心高さ、FP(フェースプログレッション)値をヘッドに刻印。さらにシャフトには質量、トルク、キックポイントを印字し、重心設計とクラブスペックという概念を世の中に植え付けて、プロを含む多くのゴルファーに長く愛されるアイアンとなりました。

 

アイアンの構造を疑え

さらに2000年代に入ると、SPEEDアイアン(2001年)を発表し、実際のコース、芝生の上での打ちやすさに優位性のある中空構造アイアンを推し進めます。

ロングアイアンをユーティリティ形状(955POWER)にしたコンボアイアンもラインアップし、DATAアイアンで自ら築き上げてきたキャビティ構造というアイアンの常識を覆しました。

 

アイアンの常識を疑え

そして2006年には、ゴルフの常識を疑う新しいコンセプトのアイアン、egg PC-01を発表。

従来のアイアンのロフト角、クラブ長さという概念を叩き壊し、1番手以上の飛びとやさしさを可能としたこの非常識なクラブにより、アイアンは新たな時代に突入したのでした。

このように世の中の常識、さらには従来のPRGRクラブの常識さえも疑って、新しいクラブを世の中に生み出してきたPRGR開発チーム。その秘密はこんなところにあります。

 

アイディアの源泉

神奈川県平塚市 PRGR平塚事業所

ここで、月に1回必ずおこなわれている会議があります。

※画像は2018年当時のもの

企画チームと開発チームが集まる企画会議、通称”アイディア会議”です。

PRGRの開発精神には”100枚の資料より1つの試作品。10回の会議より1つのテスト。”という言葉があり、その精神は現代の企画開発チームにも受け継がれています。

この会議は、普段の仕事、生活のなかで、”見た、聞いた、感じた”ことをざっくばらんに話し合いながら、自分のアイデア(仮説)を説明したり、自ら作った試作品をお披露目したりする場なのです。

 

創業以来続くこの会議。ここでは肩書きでの呼び名は禁止してフラットな関係でやりとりします。そんな会議室には、創業メンバーによって掲げられたルールが常に会議メンバーを見下ろしています。

何かを生み出さなければいけない会議ではなく、ゴルフを愛し、ゴルフに悩む仲間として、どんなクラブ、アイテムがあればもっとゴルフを楽しめるかをとことん話し合い、試作品を見せ合いっこして盛り上がる会議です。

ちなみに過去のPRGRの歴史を振り返ってみると、このアイディア会議での会話がきっかけで生まれた商品はいくつもあります。

 

■1995年10月

開発スタッフ 『女性用のSWEEPのドライバーに硬いシャフト挿してスプーンの代わりに使ったら、フェアウェイからドライバー並みに飛びました(笑)』

というパワーのある若手スタッフから飛び出た言葉から生まれた、ドライビングスプーンZOOM f.(1997年)

 

■2005年11月

開発スタッフ 『R35ウェッジって方向性が滅茶苦茶良いから、これでアイアンセット作ったらゴルフが楽になるんじゃない?』

という一言から試作品を作りはじめ、途中頓挫するものの紆余曲折を経て完成したのが、eggアイアンでした。

 

■2009年8月

開発スタッフ 『知り合いのシニアゴルファーが、夏のラフに手こずっちゃって。ラフ脱出専用のクラブ作ってくれれば買う!って言ってくれてるんですけど。。。』

というゴルファーの悩みを訴えかければ、それから10年以上の時を経て、窮地を救うQ(2018年)が多くのゴルファーを救うために誕生。

 

■2018年7月

開発スタッフ 『なんだよ今年の夏の暑さは!!こんなんじゃとてもゴルフできないよ。』

企画スタッフ 『さっきのラーメン屋さんで涼しそうにラーメン食べてた工事の人の服見た?風船みたいに膨らんでたね。ちょっと調べてみようか。』

という何気無い会話から誕生したのが、夏のゴルフを快適にするAIR COMPO(エアーコンポ/2019年)です。

■AIR COMPOについて詳しくはこちら

ちなみにアイアンについては、たびたびアイディア会議で議論されてきたある”ネタ”がありました。

 

狙えるアイアンの開発

■2012年3月

70台でラウンドする実力を持つある開発スタッフが、アイディア会議で暖めてきたアイディアを口にします。

 

開発スタッフ 『アイアンって、飛ばすものじゃなくて狙うものですよね。飛距離性能を犠牲にしてでもトコトン方向性の良いクラブを作りたいんですけど。』

 

エッグアイアンが好調で、より飛距離に特化した4代目モデルを開発しているさなか、真逆の提案をし始る開発スタッフ。たしかにユーザーアンケートでクラブに求める性能の上位に来るのは、”打ちやすさ”と”方向性”でした。

※当時の資料・ゴルファー意識調査アンケート

さっそくアイアンの打ちやすさと方向性を調べていると、当時のアメリカPGAツアープロのスイングは、日本人のプロに比べてかなりアップライトにスイングしていることに気付きます。

テレビ画面に分度器を当てて、アドレスの前傾角度やクラブの軌道を調べる開発スタッフ。遂にはPGAツアーメンバーとジャパンゴルフツアーメンバーのプロフィールを調べ上げ、外国人選手より日本人選手は平均で身長が約10センチ低く、ドライバー飛距離は約10ヤード飛ばない。そしてアドレスでのドライバーシャフトの傾き具合が3.5度フラットであることがわかりました。恐ろしい熱意です。

 

開発スタッフ 『外国人プロと日本人はそもそも体格もパワーも違うから、同じ設計のクラブを使ってたらダメなんじゃないかなあ。』

 

実際、外国人プロはアイアンをウェッジのように縦振りで振っていました。

アイアンでもウェッジのようにピンを狙える設計のアイアンを作れば方向性が安定するのでは?ということで、7番アイアンでウェッジのようにスイングできるようクラブ長さを2.5インチ短く(34.25インチ)、ライ角は2.5度アップライトに(65.5度)、ヘッド質量を30グラム重くした(304グラム)、通称”変態アイアン”をという試作品を作り上げました。これなら自然とボールと体との距離も近づき、ウェッジのように縦振りでショットできそうです。

面白そう!ということでさっそく開発チームはゴルフ場に繰り出します。

結果、

 

開発スタッフA 『7番アイアンがピッチングウェッジのように打ちやすい!』

開発スタッフB 『1番手飛ばないし球が上がりづらい。』

開発スタッフC 『ずいぶんシャフトが硬く感じるんだな。』

 

開発チームの評価は賛否両論。全番手で同じように短くした結果、ロングアイアンは球が上がらず、ウェッジは短すぎてボールに届かない現象が発生。でも7番アイアンは狙っていた性能を出せそうです。火がついてしまった開発スタッフは、さらに試作クラブの改良とテストを繰り返します。

※当時の資料・通常アイアンとのアドレスの違い

 

■2012年4月

ウェッジのような打ちやすさと安定性を持つ変態アイアンに、もう少し飛距離と球の高さを。ということで改良を重ねたアイアンを翌月のアイディア会議で披露します。

その名も、”変態アイアン改”!

飛距離不足を補うためにヘッドはエッグフォージドを使用し、長さも見直しました。7番を35インチにして番手間のクラブ長さを0.25インチピッチに。シャフトも柔らかくして短くてもしなりを得られるように工夫しました。

※当時の資料・変態アイアンと通常クラブの差

タングステンパウダーと接着剤でヘッドを重く。

ライ角をアップライトに。

7番アイアンだけでなく、セットでの打ちやすさを追求した変態アイアン改

開発スタッフはラウンドテストを繰り返し、様々なゴルファーにも試してもらってデータを収集。これがそのまま製品化することはありませんでしたが、打ちやすさを重視した短いアイアンがスイングに及ぼす影響、ライ角をアップライトにすることによるヘッド物性の変化などは、重要なデータとしてPRGRのクラブ開発の知見に蓄積されていくのでした。

 

■2017年12月

変態アイアンの試作からおよそ5年後。アイディア会議にまたまた珍しいクラブが持ち込まれました。

 

企画スタッフ 『今話題のワンレングスアイアンを試作しちゃいました!』

 

”変態アイアン改”を試作した開発スタッフとは別の、スコア110を切れない企画スタッフが作ったのは、アイアンセットの長さが全て同じ長さ(36インチ)のアイアンです。PGAツアープロの活躍に完全に感化されて、『これなら自分でもミドルアイアンが打てるかも。』と、さっそく試作品を作り上げたのでした。

本来アイアンは番手ごとに長さが異なるため、ヘッドも番手ごとに質量、重心設計をしています。全番手を同じ長さにしようとするとヘッドの質量や重心設計、ライ角、ロフト角の調整がとても大変です。番手別にウェイト細かく取り付け、全番手同じ振り心地になるように細かい修正を重ねました。

そして極めつけは、通常のグリップの倍以上あろうかという極太グリップ。

 

企画スタッフ 『このアイアンなら僕でも安定して打てそうです!』

 

そう胸を張る、平均スコア110の開発スタッフ。

たしかに打ちやすい。けれどミドルアイアンはパワーが無いと球を上げきれないし、ウェッジは長すぎて振りづらく狙いづらい。ということでコンセプトは面白いが、これもまた製品化には至りませんでした。このように、PRGRアイディア会議では様々なアイディア、試作品が試され議論されるも、実際に製品化されるのは本当にごくわずかなのです。

 

■2019年9月

横浜ゴム平塚製造所 PRGR事業所

ここでも試作品づくりに精を出す開発スタッフが。

2年後の発売に向けて新コンセプトのアイアンの開発に取り組む開発スタッフ。今回の開発テーマは、”飛んで、狙える”アイアンです。

この課題に向け、PRGR開発チームはアイアンの常識に挑みます。

 

つづく

 

*記事中の写真は一部イメージです

コメント

  1. K島 より:

    プロギア の皆様すごい!!
    なんでしょう?この歴史の重みは。
    既成概念を覆えし続けるプロギア の皆様に頭が下がります。

    1. prgr より:

      K島さん
      コメントありがとうございます!なんなんでしょう。歴史の重みというより、創業メンバーふくめてみんな苦しいほどゴルフが好きなんだと思います(^_^)

  2. アツ より:

    それまでM社のマッスルバックを使っていて、打感は好みでしたがライが悪いところからはなかなか球が上がらずくろうしていたところ、銀座の会社の近くのプロギアショップで見かけたdata711に一目惚れして購入、打ちやすさを実感してドライバーも銀チタンにしてからスコアが縮まりシングル入り出来ました。

    その陰ではこんな楽しい苦労話とスタッフの熱意があったのですね!

    1. prgr より:

      アツさん
      コメントありがとうございます!DATA711!!ありがとうございます。20年以上前ですね。その当時はサイエンスフィットももちろんなかったから、銀座中央通りの松屋百貨店の向かいにあった直営店ですね。試打室も無いしアパレルメインのお店でしたが、シングル入りのお手伝いができて嬉しいです(^_^)

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