第6話 『ロングアイアンへの挑戦。タラコの誕生。』

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PRGRの成り立ちやクラブにまつわる過去、新製品開発に奮闘するスタッフのいま、そして新しいクラブを世の中に生み出していく未来を紹介していくノンフィクション、PRGRクラブ開発物語、通称ギアスト!

毎回ご覧いただきありがとうございます。私プロギアで販売促進を担当しておりますNと申します。

今回は、古くからのファンからPRGRと言えばコレ!というクラブの誕生秘語をお届けいたします。

 

中空アイアンとニューラインコンセプト

1983年にゴルフ業界に参入したPRGRは、翌年鍛造アイアンのFG-301・302・304を発売。ヘッドスピード別にカーボンシャフトを設計したものの、ヘッドは一般的なアイアンと性能での差別化を図ることができませんでした。

ゴルフの素人集団はアイアンの性能についてうまく言語化できず、それを設計と製造に落とし込むことができません。さらにゴルフの腕前も初心者レベルの開発スタッフ。出来上がったクラブは自分達の目指すやさしく使いこなせるものではありませんでした。

 

開発スタッフ 『う~ん、、、自分達がやりたいことを実現するには、やはりプロの力が必要だ。』

 

そこでクラブ設計家の竹林隆光氏(故人)とアドバイザリー契約を結び、クラブ設計のイロハを教えてもらいながら新たなアイアンの開発に挑みます。目標性能は”打ちやすいロングアイアン”。当時アイアンは今のようなコアセットと単品アイアンの組み合わせではなく、2番アイアンからサンドウェッジまでのセットが主流でしたが、ロングアイアンはヘッドが小さくソールも薄く、上級者でないと使いこなせない代物でした。

そこで打ちやすいロングアイアンにすべく、ロングアイアンはステンレス鋳造の中空構造にしてミスへの許容範囲を広げ、ミドル、ショートアイアンになるにつれてソールを標準サイズにおさめ、ヘッドバランスを軽くしてコントロール性能を高めた500シリーズアイアン(CT-510・502・503)が完成。

ロングアイアンのソールを広げ、ショートアイアンになるにつれてヘッドバランスを軽くする。従来のアイアンの常識と真逆の【ニューラインコンセプト設計】を後押しするため、当時はクロームメッキされたピカピカ仕上げのアイアンが一般的であったなか艶を消したバレル仕上げを採用。シンプルでありながらギアとしての機能美を感じさせるデザインとしました。

500シリーズアイアンは”鉄人”、”三兄弟”という広告コピーとともに多くのニューゴルファー(団塊世代)から好評を得てヒット。そしてこのアイアンの開発過程で開発スタッフは重心設計について多くのことを学び、これ以降のクラブ開発に大きな影響を及ぼすのでした。ただし、まだまだゴルファーとしての悩みは尽きません。

 

開発スタッフ 『従来より打ちやすいけど、やっぱりロングアイアンは難しい!もっともっとやさしくて飛ばせるロングアイアンが作れないだろうか。』

 

イージーロングへの熱望

ロングアイアンを打ちこなすことはアマチュアゴルファーの夢であり、ハンデキャップを減らすためには必須の技術でした。ゴルフ業界への参入から数年が経ち、ゴルフ歴も数年となったスコア100前後ゴルファーであるPRGR開発スタッフにおいてもこれは非常に重要な課題です。

当時話題となっていたカーボンヘッドアイアンの開発にも着手していましたが、その性能はどちらかというとランで飛距離を稼ぐものでした。カーボンヘッドの良さを生かしつつ、よりやさしく飛距離アップを達成する方法は無いものか。そこで開発スタッフは重心設計の知見から低重心化を目標に、当時開発していたカーボンヘッドドライバーの技術をロングアイアンにも転用してみることを閃きます。

マスターヘッドを削り、ステンレスのソールプレートを土台にしてカーボンヘッドを成型、ストレートネックとグースネックの2タイプの真っ黒いヘッドの試作品(プロトタイプ)を横浜ゴム平塚製造所で作りあげました。

早速これを有明にあったゴルフ練習場、東京スポーツセンター(当時)に持って行って実際に打ってみると、、、

 

開発スタッフ 『うおっ!』

 

予想を遥かに超える高い弾道で200ヤード先のネットにキャリーで飛んで行きました。スペックも開発コンセプトも無いまま、一瞬にして商品化が決まった瞬間です。開発スタッフはすぐに群馬県高崎市の竹林氏の事務所に飛び、ここで重心設計、FP値※1についてアドバイスを貰い、徹底的に議論を重ね、さらに試打を繰り返して最終形に近づけていく日々を過ごします。

※1 シャフト軸線からリーディングエッジまでの垂直距離。グースネックの度合いを表す値。FP(フェースプログレッション)値が小さいほどグースの度合いは大きくなる。

*樹脂ヘッドで製作したロングアイアンの試作品

 

開発スタッフ 『プロみたいに吹き上がるような凄い球筋のロングアイアンのショットはアマチュアのパワー、技術では打てない。それならクラブを長くしてフェアウェイウッドのように払い打つほうが楽にボールが上がるんじゃないか?』

 

ソールのステンレスプレートのトゥ、ヒールに質量を持たせ左右の慣性モーメントを高めながら、可能な限り重心を下げる。ボディは軽量のカーボンを採用しヘッドの大型化を図るとともに、摩擦係数(μ)の少なさによるバックスピン量の減少に期待。FPについてはストレートネックにして打ち出しを上げるか、グースネックでつかまりを高めるかさんざん悩んだ末に、クラブ長を1インチ長くすることにより打ち出し角が高くなることを発見。FP値をゼロにしてグースネックのつかまるヘッド設計を採用しました。

■従来の4番アイアンでの初期弾道

■開発モデルでの初期弾道

CADやCAMといったコンピュータを用いた設計、製造手段の無い時代、手探りでいくつもの試作ヘッドを作り、ようやく形になった最終サンプルを手に開発スタッフはゴルフ場へ。1番ホールのセカンドショットが、高弾道で200ヤード先のグリーンに着弾した瞬間、開発スタッフは4年にも及ぶ試行錯誤のトンネルの出口の光を見たのでした。

 

開発スタッフ 『まったく新しいギアが完成した。この”絶対的な性能”に応えるデザインにしないといけない。』

 

インテストの衝撃

伝統的なゴルフクラブの概念を覆すギアなので、ゴルフ場においても圧倒的な存在感を見せ付けないといけない。そこでゴルフ場の緑の芝に対して最も目立つ色をカラーチャートから選び出し、決定したヘッドカラーはレンガ色でした。ザラザラとした手触りの仕上げと相まって異様な存在感を醸し出します。

このロングアイアンは絶対的な性能を持つので従来のPRGRのラインナップには当てはまりません。

そこでカーディーラーがそうしていた様に、PRGRブランドを販売する㈱スポーツコンプレックスとは別にこのクラブ専門の販売会社インツ㈱を立ち上げ、赤い肌の異性人をメイングラフィックとした広告を日経新聞の全15段に出稿。こうして何から何まで従来のゴルフ業界とは一線を画すギア、INTEST(インテスト)が1988年に誕生したのです。

ちなみにINTEST(インテスト)というブランド名は、

  • INTEGLAL・・・全体の総合に欠くことのできない
  • INTEGRATE・・・完成、総和
  • ESSENTIAL・・・必須の
  • ESTABLISH・・・確立

というそれぞれのワードを組み合わせた造語で、異なる特性の”個”の集団が”優れた全体”を生むという意味を持たせネーミングです。

INTESTはカーボンヘッドのロングアイアンLX(#1・#2・#3・#4・#5・#6・#7)とステンレス中空ヘッドのMX(#3・#4・#5・#6・#7)、ステンレスヘッドのSX(#8・#9・PW・AW・SW)とで構成されており、アイアンは同一素材で長さ、重さ、ロフトが直線的(リニア)にフローするものという概念を打ち破る【ノンリニア設計】のラインアップ。自身のゴルフスタイルに合わせて自由に組み合わせが可能な、今で言うコンポアイアンでした。

これが圧倒的な商品性能により口コミが口コミを呼び大ヒット。特にロングアイアンのINTEST LXはその脅威の飛距離性能を目の当たりにしたゴルファーが、ゴルフ帰りにゴルフシューズのままショップに買い求めに行くほどで瞬く間に店頭から商品が消えました。

ちなみに熟考を重ねて造りだしたINTESTというブランドネームですが、世の中においてはその外見から”タラコ”という愛称が一般化。お助けクラブの別称として広く知れ渡ることとなりました。

多くのゴルファーに新しいゴルフの幕開けを告げ、スコアアップを手助けしたタラコ。そのヘッドに記された、

”The way we are.”

というメッセージ。”自分たちのあり方”が、遂に多くのゴルファーに認められたのでした。

 

こうして記録的ヒットを飛ばし続けるも、発売から数年が経過した1990年代中盤に入ると、世の中はカーボンヘッドからチタンヘッドの時代に移行してゆきます。折りしもPRGRもカーボンドライバーで固定化されたイメージを一新すべくチタンドライバー、軟鉄鍛造アイアンを市場に投入。プロ活動にも力を入れて契約プロがツアー勝利を重ねることにより、今まで縁の薄かった競技志向ゴルファーにも注目され始めた頃でした。ここで、

 

開発スタッフ 『競技志向ゴルファーにも満足してもらえるような、フェアウェイウッドより飛んでアイアンより方向性の良い、そんな攻めのギアが作れないだろうか。』

 

INTESTは依然高い人気を得ていたものの、いつしかメインユーザーはシニアや非力なゴルファーとなり、そんなゴルファーのお助けクラブというポジションとなっていました。そこで新素材への新たな可能性を信じ、開発スタッフは試作品作りに取り掛かります。

 

新時代の戦うロングギア

INTESTで成功したカーボンとステンレスに変わる異素材複合。溶接が不可能と言われたチタンとタングステン合金を特殊技術によって接合し、チタンの4倍の比重を持つタングステン合金をソールに配置することによって、低重心化とフェアウェイウッド並みの重心深さを獲得したロングアイアンの開発に成功。

この試作モデルはプロ、上級者へのテスト評価でも反応は上々。”ドライバーと同じくらい飛ぶ!”とコメントするプロもいるくらいで、新しいギアの誕生を予感させます。

ただし、ここでも開発スタッフの頭を悩ませたのがFP値です。プロ、上級者に評価の高い構えやすいストレートネックタイプと、一般ゴルファーに打ちやすいつかまりの良いグースネックタイプ。どちらを採用するかは、最後の最後まで結論が出ませんでした。そこで、

 

開発スタッフ 『プロ、上級者が求める性能と一般アマチュアが求める性能は異なる。両者をカバーできないから、、、両方発売しようか。』

 

パワーロングギア ZOOM

こうしてINTESTの登場から9年後、チタンとタングステンによる複合構造のドライビングアイアンZOOM i(1997年)が誕生しました。カメラで言うズーム機能そのままに、200ヤード先のグリーンを拡大する性能を持つパワーロングギアです。

このクラブにまず飛びついたのは狙い通りプロゴルファーでした。狭いホールのティーショットや、2オンを狙うロングホールで驚くような性能を発揮。INTESTに比べてスピンコントロールが出来、つかまり過ぎないという特長はプロにとってセッティングに欠かすことのできないクラブとなりました。

トーナメント中継でも”ここぞ”という場面でテレビ画面に現れるZOOMに競技ゴルファーは注目。INTESTでは満足できなかったゴルファーも虜にし、あっという間にゴルフ界を席巻。

そして上級者が使用する様子を見てその波はアベレージゴルファーにも浸透していきます。ここでやさしく捕まるタイプのヘッド【type020i】が大勢の一般ゴルファーをカバー。PRGRのクラブで初めて、トップダウン型の拡がりを見せたギアとなりました。

 

ZOOMのヘッドに記された、”GOLF PROGRESSING”の刻印。

ゴルフの世界を前進させる”。という役割を与えられたZOOMは、確実にゴルファーに新しい世界を提供しました。

 

いつしかタラコがユーティリティの元祖。ZOOMはユーティリティの先駆けと言われるようになりましたが、その根底にはロングアイアンが上手く打てない男たちの悲願が詰まっていたのでした。そしてウッドでもない、アイアンでもないユーティリティというカテゴリーにおいて、その後もPRGRは多くのゴルファーを救うべく今日まで数々のギアを世に送り続けているのです。

 

つづく

コメント

  1. 2021年はゴルフの鬼になる より:

    楽しく拝見しています。私も元リケダンで若い頃は材料開発、商品開発を担当しており、開発者の苦労がよくわかります。今後もゴルファーの度肝を抜くような商品を期待しております。そういえば当時、職場の上司がzoomを使っていたことを思い出しました。ネットで探して購入してみます。使ってみたくなりました。

    1. prgr より:

      2021年はゴルフの鬼になるさん
      コメントありがとうございます!開発の方の苦労というのは、こんなブログでは語りつくせないものがあるかと思いますが少しでも共感いただければ嬉しいです、ちなみに当時48000円だったZOOMも、いまは中古ショップではかなりのお値打ち価格で手に入りますね(^_^)

  2. カズさん より:

    今もZOOMにお世話になってます。

    1. prgr より:

      カズさんさん
      コメントありがとうございます!ZOOMご使用ありがとうございます。ちなみに私もバッグにもまだ3本入ってます(^_^)

  3. てらぱん より:

    24年?前、職場の仲間で、上司の退職祝いにZOOMを贈ったことを思い出しました。
    その後自分で購入したZOOM Cは、今でもバッグに入ってます。

    1. prgr より:

      てらぱんさん
      コメントありがとうございます!まさにZOOM発売当時。素敵なプレゼントですね!今もご愛用いただきましてありがとうございます(^_^)

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