第20話 『やさしく、飛ばして、狙う。』NEWアイアン開発編②

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PRGRのクラブにまつわる過去や、新製品開発に奮闘する現在、そして新しいクラブを世の中に生み出す未来を紹介していくノンフィクション、PRGRクラブ開発物語、通称ギアスト!多くのアマチュアゴルファーの悩みを解消すべく、創業以来、研究開発を続けてきたプロギア。

数々のゴルフ業界の常識を打ち破ってきたPRGR開発チーム。仮説、実証のための試作品づくりは彼らの日課のようなものです。

現在開発チームが取り組んでいるのは新しいアイアンづくり。およそ2年後の発売に向け、今日も試作品作りに精を出しています。

 

新アイアン、誕生!

■2019年9月 横浜ゴム平塚製造所 PRGR事業所

ここで何やらゴソゴソと探し物をしている開発スタッフ。

どうやら試作品を組むためのヘッド、シャフト部材を集めていたようです。

ヘッド質量や、ロフト角、ライ角などを確認しながら、

バランス調整をおこない、

作りあげたクラブがこちら。

これは、、、2019年モデルのNEWエッグフォージドアイアンですね。

 

開発スタッフ 『自分にとって打ちやすくて、方向性に優れたクラブを作ってみました。』

そう胸を張る開発スタッフ。

スコア的には80台でラウンドできるものの、その独特なスイングから繰り出されるショットは安定感に欠けるため、何とか自分が安定して打てるアイアンを作っていたのです。

ヘッドはNEWエッグフォージドですが、そのバックフェースにはウェイトが幾重にも貼られており、そこには

25 175 180

という謎の数字が油性ペンで書かれています。

こっちのヘッドには

35 150

の文字が。

これはロフトと飛距離を記入しているらしく、組みあがったアイアンセットを並べてみると、、、こ、これは!!

開発チームが長年チャレンジしては挫折してきた、”変態アイアン”の進化形、”NEW変態アイアン”です!

 

初代変態アイアンは、7番アイアンをウェッジの長さ(34.5インチ)に合わせて、各番手を通常より2.5インチ短くして組み上げるものの、飛ばないし、ウェッジが短かすぎてあたらない。変態アイアンを改良した2代目は、7番から下の番手を35インチで統一して、その上の番手の長さを通常の0.5インチピッチでなく0.25インチピッチにしたものの、これも陽の目をみることはありませんでした。

※変態アイアン改(2012年)

その5年後、全番手8番アイアンの長さに合わせたワンレングスアイアンを試作するも、ミドルアイアンは球が上がらず、ショートアイアン、ウェッジは長くてピンを狙いづらく、これも製品化は断念。

※ワンレングスアイアン(2017年)

そして今回は、アイアンの長さを7・8・9番とPW・AW・SWでそれぞれを同じ長さにした、2レングスアイアンを試作したのです。

 

開発スタッフ 『この長さ設定だとミドルアイアンで球は上がりやすいし、ショートアイアンはピンを狙いやすい。番手ごとにスイングやボール位置を変えなくて済むので、シンプルに、スマートにラウンドできる。』

 

アイアンの長さについては過去に何度も挑み続けてきたテーマですが、それでも挑戦し続ける理由は、数十年前に創業メンバーが掲げたPRGRの企画ルールの一番目にあります。

過去幾度の挑戦が失敗に終わろうと、その経験は次の世代に受け継がれ、いつか必ず花開くことを信じ開発スタッフは何度も挑み続けます。

ちなみに、無理矢理ロフトやライ角を合わせているので調整がもの凄く大変で、シャフト硬さも上番手を打ちやすく柔らかくするために、セットで数種類の硬さの異なるシャフトを使用するなど工夫しています。

 

そうした苦心の結果生まれた”NEW変態アイアン”。開発チームは早速このアイアンをコースで試してみると、

開発スタッフA 『いいね、打ちやすい!』

 

開発スタッフB 『これくらいシャフトがしなったほうが気持ち良いね!』

 

開発スタッフC 『・・・これ、いけるんじゃない?』

 

難航していたアイアン開発にひとつの光が見え始めてきました。過去の挑戦が未来への種となり、いつか花開いて実を結ぶこともあるのです。

 

飛び系アイアンを、疑え。

2007年の誕生以来、従来のアイアンの常識を壊した形状、スペックで話題をさらい、飛び系アイアンの先駆けとも言われたeggアイアン。

そのエッグアイアンも2019年には7代目が登場し、いつしか”飛び系アイアン”というカテゴリーはゴルフ界の中でもアイアンの中心的存在となっていました。

そんななか、開発スタッフは飛び系アイアンを使用するゴルファー達の、ある”声”を耳にします。

  • ゴルファーAさん 『飛び系アイアンは球が上がらなくて、グリーンで止まらないんだよなあ。』
  • ゴルファーBさん 『5番も、6番も、7番も距離変わらない!』
  • ゴルファーBさん 『7番は確かに飛ぶんだけどさあ、肝心のピンを狙うショートアイアンは番手の飛距離差が20ヤードくらいあるからどれで打ったらいいのかわからないよ。』
  • ゴルファーDさん 『ピッチングウェッジでロフト40度だと、ウェッジを何本も入れないと。』

 

飛び系アイアンを使うキャリアの長いゴルファーからの声。進化した飛び系アイアンは従来のアイアンスペックとは大きくかけ離れたものになっていました。

※アイアンのスペックの基礎となったDATAアイアンと最新のEGGアイアンのスペック差

 

飛び系アイアンがその飛距離性能で多くのゴルファーの支持を集める一方で、飛距離性能を生かしきれないゴルファーも僅かながら存在したのです。

そんな悩めるキャリアゴルファーにNEW変態アイアンを打ってもらうと、打ちやすさと安定感が実感できて大好評!左右(方向)のブレがかなり軽減されました。

あとはスコアアップに大切な適正飛距離ピッチ、つまり縦(距離)のブレの軽減です。そこでゴルフ場でのテストを何度も何度も繰り返し、結論として出て来たのが、

 

開発スタッフ 『同じ長さにした場合、番手間のロフト差は5度にすると、適正距離を打ち分けられる。』

 

ヘッドスピード40m/s前後のキャリアゴルファーをメインターゲットに開発をすすめていたスタッフが出した答え。それは飛び系アイアンのロフト設計を否定することでした。非常識なエッグアイアンで築き上げた常識を自ら破壊し、新たなアイアンの常識に挑みます。

それはエッグアイアンを開発したからこそ出来ることであり、目指すは飛距離性能を追い求めた飛び系アイアンの対極にある、飛んで狙えるクラブです。

こうしてNEW変態アイアンは、テストを重ねた結果、今までの常識には当てはまらないスペックのアイアンとなりました。

このスペック設計は、多くのキャリアゴルファーに狙える飛距離とやさしさを提供できます。しかし、いまのアイアンの常識とは明らかにかけ離れているため、この考えが世の中に受け入れてもらえるだろうか、その壁を越えられるのだろうかと悩む開発チーム。

だがここで、止まるわけにはいきません。

 

開発リーダー 『テスト結果ではアマチュアゴルファーから高い評価を得ている。このアイアンは悩めるゴルファーに絶対に受け入れられるはずだ。製品化に向けて取り組んで行こう!』

 

世の中のゴルファーを笑顔にするため、遂に2012年からテストを繰り返してきた”変態アイアン”が、製品化に向け動き出しました。

 

キャリアゴルファーへ、狙える飛びを。

新しいアイアンのコンセプトを、ミドル、ショートアイアン、ウェッジのそれぞれを同じ長さの3レングスにして、ロフトピッチを適性にする、”飛ばして狙えるアイアン”と定め、2021年の発売に向け開発チームは動き出します。

CADで設計したヘッドを3Dプリンターでサンプル製作しますが、

同じ長さのクラブで、振り心地も同じにするということは、ロフトを変えながらヘッド質量やライ角、重心位置、慣性モーメントなどを合わせないといけません。

これは予想以上に難しい課題でしたが、ようやく、

新しいアイアンの形が見えてきました。

 

■2020年10月

形状修正など、細かい調整を繰り返した結果、

セカンドサンプルが出来上がってきました。

そのゴールが徐々に見えてきましたが、製品化するにはまだまだいくつもの課題を越えねばなりません。翌年の発売を目指し、いよいよキャリアゴルファーへの本格的なテストが始まります。キャリアゴルファーの求める性能を達成できているのか。開発スタッフの奮闘は、まだまだ続きます。

つづく

 

*記事中の写真は一部イメージです

コメント

  1. おペル.デシャンボー より:

    ワンレングスアイアンに興味があり、プロギアさんならワンレングスで飛び系、止まる、易しい、打ち易いギアを作ってくれると信じ、ずーっと待っていました。今はC社X16です。
    試打でプロギアRS 2018 3Wの飛びと打感と顔に魅了され、2018の5W、4U、5Uを購入。
    ドライバーはRS5シリーズを試打などで悩んでいたらLSが出たので、もう少し様子を見ますがアイアンは直ぐ買おうと思ってます。
    プロギアで揃えていきます。
    これからも、いいギアをよろしくお願いします。

    1. prgr より:

      おぺる.デシャンボーさん
      コメントありがとうございます!そしてPRGRクラブをご愛用いただきまして、誠にありがとうございます。ワンレングスアイアンには開発スタッフも昔から関心を持っていました(それくらい開発スタッフもゴルフで悩んでいたんだと思います)。悩みぬいて遂に誕生した05アイアンをぜひお試しくださいませ(^_^)

      1. おペル.デシャンボー より:

        C社のX18でした。

        1. prgr より:

          おペル.デシャンボーさん
          コメントありがとうございます。名器ですね!私もこっそり憧れてました(^_^)

  2. 2021年はゴルフの鬼になる より:

    常識を疑い、eggアイアンのように、当時の非常識を今の常識にしてしまうプロギア開発メンバーの“目の付け所”素晴らしいですね。3レングス……非常に興味あるんですが、一度使うと元に戻せない気がして……^_^、世界の常識になればいいんですが。

    1. prgr より:

      2021年はゴルフの鬼になるさん
      コメントありがとうございます!悩めるゴルファーに向けて最適なクラブを開発しましたが、世の中の主流になるにはまだ時間がかかるかもしれませんね。エッグのような飛び系アイアンが世の中のトレンドになるのにも数年の時間がかかりましたので、引き続き世の中に広める活動をおこなっていきたいと思います(^_^)

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